昨夜、ルース先生がポーランド大使館から授賞されました。
98.9歳となりました。
ピアノの音は相変わらず一音一音意味を持って体に染み込んできます。
昔ルース先生は私に「どのような速度で弾いても、音楽的でなければいけない」と、言われましたが、まさにそれを体現しておられます。(遅いほど難しいと私はチェロを演奏しながら痛感します。)
演奏しているのは、ショパンの前奏曲第23番です。
この23番の前奏曲は、ルース先生が、「天に音の一つ一つが立ち昇って行って、キラキラしながらまた地上に降り注ぐ」と私に話された事を思い出しました。まさに平和へのメッセージですね。
また、この前奏曲23番で思い出すのは、2007年4月12日の千年桜の醍醐桜への奉納演奏の朝に、私の友人から「親友がこれから手術室に入りますが、是非ルース先生に奉納演奏の時に彼女のために一曲演奏していただけないか」と、連絡を受けたことです。
先生にそのようにお伝えしたら、桜の下で最初に弾かれたのがこの第23番の前奏曲でした。
満開の醍醐桜の花びらひとつずつが音となって、天昇って行く光景が今でも鮮やかに目に浮かびます。
もちろん、その方の手術は成功し、ルース先生のサントリーホールコンサートにもいらっしゃいました。
2007年4月12日10時頃
岡山県真庭市山頂でのルース·スレンチェンスカの醍醐桜奉納演奏
撮影者:三船文彰
因みに、ルース先生が演奏されたピアノが、その朝の4時に岡山市の私の家から醍醐桜の下の地元の方々が新しい杉板で特製したステージの上まで運んだ、1788年製のクララ·シューマン使用のグロトリアン·スタインウェッグです。
実は、プロの方は大使館で弾かれたピアノに注目しております。ヤマハなのに、(一般的な評価です、悪しからず😊)ルース先生が弾かれるとスタインウェイにも負けない音がすると。
私としては、ルース先生のいつもの寝癖のしっかり付いた髪をどうにかできなかったのか、もう少し巨匠に相応しい服装や靴を整えて下さったら、と思えてなりませんが。
まあ、これこそがルース先生の全ての虚飾と無駄を削ぎ落とされた境地ですが😊
ピアノに関してですが、ルース先生はもともとピアノを選びません😊(山村の小学校のボロボロのヤマハでも、ルース先生が弾くとスタインウェイと聞きまがうような音がしました)。
昔私がルース先生に「先生はいつ何処でも即座にどの曲も完璧に近い演奏ができるのに、なぜまだ毎日8時間も一音ずつこんな苦しい練習をするのですか?」と聞きました。
ルース先生は即座に「何処で、どのピアノに当たっても、ピアノのせいにせずにそこに居合わせた一人でも一千人でも、一生忘れられない思い出を残すために、私は一日8時間一音ずつ練習するのです」と、私におっしゃいました。
そして、「もし私が自分のピアノを会場へ持ち歩けるのでしたら、私は毎日30分の練習で十分です。」「いつも同じピアノで弾くことは、危険なことです。なぜならそれ以上のアイデアが出なくなる恐れがあるからです。」とも、付け加えられました。