2022年の1月15日、ルース·スレンチェンスカは元気で97歳の誕生日を迎えました。医者からも「健康です」という太鼓判の墨付きを頂いたとのことです。
誕生日に合わせて昨年6月に録音したCDもデッカから3月にリリースされます。当レーベルで制作作した19枚と合わせて、78歳から96歳までのCDが20枚という整数となり、デッカが昨年復刻した30代のLPのゴールドディスクのCD10枚合わせて30枚となりました。これまでも、これからも破られることのない、また一つ人類の偉業達成です。
19世紀と20世紀のピアニズムを継承し、さらに前人未踏の境地を開いたのみならず、努力、頭脳、哲学、人間性、人柄においても、全ての芸術家の鑑と言えるこのような稀有なピアニストと同じ時代で出会えたのは、まさに一期一会の事と思います。
思えば、2020年の95歳の誕生日の直後、寅さんのように、カバン一つでベートーベンの生誕250年を記念する演奏会のために、日本に向かったまさにその次の日に、アメリカで新型コロナ禍が発生し、サンフランシスコで5ヵ月、
その後ペンシルベニアのお弟子さんのお宅で1年半足止めになって丸2年。
その間でもYouTubeで8回ほど演奏を届け、デッカのためにCDを録音し、パリへ3週間バカンスに行くなど、歩みを更に続けてこられました。
真の芸術家の生きざまとはどのようなものかを世の音楽家たちはしかと見つめ、見届けてほしいと思います。
三船文彰