30代のデッカのアメリカの10枚と、78歳から93歳のLiuMAERの日本の19枚と合わせて、ルース・スレンチェンスカの最高の演奏を記録した29枚のCDが日本だけで入手出来る事となりました。
デッカのこの10枚だけでも、スター・ピアニストとして歴史に残る内容でしたが、80歳からの演奏と聞き比べる事で、ピアニストの真の進化とはどんなものか、どれ程凄まじいもの、どれ程大変な事かが分かります。
私が出版したCD、LiuMAER(Liu Mifune Art Ensemble Records)の出来る過程について、改めて説明致します。
19枚のほとんどは、ルース・スレンチェンスカの78歳から93歳までの岡山でのライブ録音。
まず、お聴き頂きたいのが、ピアノの音。
「私の友だち」とルース先生が呼ぶ、私の所(「劉生容記念館」)の1926年製のスタインウェイの音、そして、録音の違いをデッカのものと是非聞き比べて頂ければ嬉しいです。
1920年代の黄金期の、しかも、良く調整したフルコンのスタインウェイ・ピアノが、最高のピアニストが鳴らしたら、こういう音がするのだ、ということが分かります。
そして、録音は、毎回日本の最高の調律師と録音エンジニアたちが、他の仕事を断ってまで、岡山で一週間缶詰して、私の所でルース先生の創造を記録したのです。
皆さんが「これ程の巨匠の仕事をさせて頂いて、冥利につきます」と、ルース先生の演奏を最高の状態に残そうと、10数年やって下さいました。
どんな大手のレーベルでも一枚のCDを作るのに、ここまでの事は出来ないと断言出来ます。
チーム全員が10数年変わらず、ルース先生に最大の敬意を払い、岡山での19枚のCDが出来たのです。
しかも、どの組の解説書も20数ページ、オールカラー、というのは、クラシックのCDではまずお目にかかる事はないでしょう。
2003年の最初の出会いから、ルース・スレンチェンスカの演奏は人類の歴史に残るものだと思い、ルース先生の芸術に恥ずかしくないよう、これ以上出来ない、という所まで追及してCDを作らせて頂いたのです。
頂点を極めて90年。ルース・スレンチェンスカの一音一音琢磨し尽くしたピアノの音は、全ての人々の心身に益する事を確信しております。
そして、1月15日に96歳となり、人類のトップランナーとなったルース・スレンチェンスカのますますの進化にご注目下さい。
三船文彰