ロシアのウクライナへの軍事侵攻が続いている中、ウクライナ人のミッシャー・エルマンを思い出しました。YouTube動画がありましたので、十八番の「タイスの瞑想曲」をどうぞ。
私の父親と私の人生の原点となった演奏です。
6歳のルース先生の才能に驚いて、ベルリン行きをバックアップしたのが、大スターバイオリニストだったエルマンでした。
ルース先生が私に、「エルマンは私の恩人です。」と、語ってくれたことがあります。
ウクライナということで、急にミッシャー·エルマンのバイオリンを思い出し、エルマンとルース先生の事を思い出しましたが、もっと肝心な繋がりを忘れてました。
実は世界最大の弦楽器コレクションを擁する、台南の奇美博物館の創設者許文龍氏は、若い頃私の父とはバイオリン愛好仲間で、よくエルマンのレコードを一緒に聞いていました。そして、なんと、まさに当時聞いていたレコードの中でエルマンが弾いていたストラディバリの超名器「ヨアヒム=エルマン」が、30年前から奇美博物館に所蔵されているのです。
そして、許氏と父の友情のお陰で、この門外不出の名器で、私が台湾と東京でこれまで何回も意義深い演奏会を開くことができました。
ルース先生は2013年に東京の求道会館で、クララシューマンのピアノを弾き、久保陽子先生がエルマンのバイオリンで演奏。ルース先生はエルマンのバイオリンとの信じられない出会いを懐かしんでおられました。
2019年の9月13日、紀尾井ホールでのクララ·シューマン生誕200年誕生日コンサートでは、エルマンのバイオリンの前の所有者のヨアヒムのこのストラディバリで、ヨアヒムの親友のクララ·シューマンのピアノが150年ぶりの共演を果たしました。
思えば信じがたいご縁の連続でした。
世界が一人の狂人によって滅びる瀬戸際の今こそ、ますます残さなくてはいけない事、やらなくてはいけない事、やりたい事は、速取りかかった方が良いですね。
せめて素晴らしい思い出、とりわけ神の采配としか思えないようなご縁のつながりを見えるような形にすることで、世界は悪と狂気によってだけ支配されているのではない、というささやかな抵抗として。